music dance poetry arts and philosophy
学園坂出版局よりお知らせ
・映画監督・坂上香さんの講演会「対話するってどういうこと?」を開催します。(8/22更新)
・ユリコさんのエッセイ風論考「家族について考える」6を公開しました。(11/21更新)
・2023年12月1日、小笠原もずくバンドライブを開催します。(11/11更新)
・2022年9月10日『生かされる場所』のCD発売記念ライブが開催されます。詳細はこちらをご覧ください。(8/5更新)
・「思想ゼミ」宇野邦一さんの連続講座を「器官なき身体と芸術」vol.15(2022年2月)でいったん終了します。アーカイブ視聴のお申し込みは受付中です。(3/13更新)
YNOさん(tp)インタビュー
小笠原もずくのアルバム『knock』では4曲の楽曲に参加し、鋭い音色を響かせるトランペットのYNOさん。アルバムのことやプロフィールを詳しく語ってくれました。小さい頃からピアノを習っていたそうで、トランペットの練習のときは欠かさずピアノも触り、いつもコードやリズムなどを確かめながら音出しをするそう。精悍な表情で、まるで少年のように楽器を手にするYNOさん。
──トランペットを始めたのは何歳の時だったんですか?
YNO(以下、Y):14歳だったんです。当時、通っていた中学校に吹奏楽部がなくて。中3になってブラスの先生が赴任して吹奏楽部がスタート、そこからトランペットを始めたんですよ。
──ピアノは習っていたんですか?
Y:ピアノは3歳からやってました。細々とクラシックを。
──なるほど、ピアノの腕もなかなかですものね。中高生くらいはどんな音楽を聴いていたのですか? クラシック? ジャズ?
Y:いえいえ、中学生のときはポルノグラフィティでしたね。J-POPにハマってましたよ。高校時代は椎名林檎をひたすら聞いてましたね。
──高校の時も吹奏楽部に?
Y:入部したんですけど、途中でやめちゃったんです。高2の夏に。ハイトーンが全然吹けなくて、嫌になって辞めちゃいました(笑)でも吹奏楽部では指揮者をしたり良い経験をたくさんさせてもらいました。ジャズを聴く機会もそこで得ましたし。ジャズ的なものが自分は好きなんだなとは感じていました。ちょうど映画『スイング・ガールズ』も流行ってましたしね。
──なるほど、その後、大学のジャズ研に入ったわけですね。
Y:最初はピアニスト志望だったんですよ(笑)。ところが新入生でピアノ志望が10人もいて。トランペットをやってましたって言ったら、そうなってしまったのです(笑)。よくある話ですけどね。
──ビル・エヴァンスになりたかったのになれなかった(笑)。
Y:そうなんですよ(笑)。
──好きなトランペット奏者は? たくさんいるかもしれないですが。
Y:トム・ハレル、それからチェット・ベイカーですね。
──トム・ハレル、すごいテクニシャンですよね。フレーズがまるでピアノのように正確で。
Y:音色も音の配列もとんでもなく美しいんですよね。
──チェット・ベイカーはヴォーカルもしますし。
Y:トランペットのソロを吹くように朗々とスキャットするのが好きなんですよ。
──ヴォーカリストとの共演も多いそうですね。
Y:ゲストとして呼ばれることが多いんですよね。今月もライブがありますし。
──吉田さんのアドリブラインが歌っぽい? コーラスっぽい? ということなのかもしれませんね。ご自身もヴォーカルをされますしね。
Y:チェット・ベイカーへの憧れも大きいですし、自分の中で出るジャズの言語はトランペットとボーカルで区別しないようにしてます。
──今回のアルバム『knock』では4曲に参加されてます。
Y:気がついたら4曲も参加してました(笑)。結構うるさかったんじゃないかな(笑)。
──そんなことないですよ、めちゃかっこいいです。でも、いわゆるスムースなフレーズがほぼ皆無だから、耳障りであることも確かですね(笑)。
Y:「なじまなさ」をコンセプトにしてみたところがありますね。ギリギリのところでプレイするという面白さというか。ヴォーカルのラインを邪魔しそうで邪魔しないくらいな。
──タイトル作「knock」あたりは絶妙なトランペットソロですね。
Y:吹きたいように吹けたので良かったです。これも「なじまない」フレーズばかりでしたけど。
──ポリフォニックですよね。まるでフリージャズ、ギリギリな感じで好きです。
──どんな練習をするとそんなプレイになるんですか?
Y:うーん、ずっと耳コピしたり、ハードバップ的なリックをひたすら叩き込むのような練習を続けてたんですが、限界があると気づきました(笑)。最近は理論を勉強して、ちゃんと狙ってサウンドする音を置いていけるようにトレーニングしています。
──ストイックですよね!
Y:苦手分野なのでとにかく時間をかけるよう意識してます。パズル的な楽しみ方ができるともっと楽しめるだろうなと思っています。
──なるほど、パズルですね! リズムにしてもそんなところがありますもんね。
──それにしてもカヴァーされるジャンルが広いですよね。
Y:最近では DJ と共演したりということも多いんです。テクノ、ヒップホップ、エレクトロニカ
など、よく聞きますね。
──ライブでヴォコーダーを使ってましたよね。
Y:ヴォコーダー、好きなんですよね。スキャットの延長線上にあるというか。
──そういう実験的なサウンドがいいですよね。吉田さんの今後の活動は、やはりエレクトロニカ? それとも?
Y:その時々で自分の中で流行りの音楽が移り変わっていくので、今後どうなっていくのかは分かりませんが、自分の「これ好きだなぁ」を積み重ねていって、自分が聴きたいと思う音楽を作っていきたいなと思っています。
──いま情報が氾濫してて、これ好き! みたいなものが見つかりにくい時代に頑固に「これ好き!」を続けていくことって意外と大変ですよね。今後の活動から目が離せませんね! ありがとうございました。(2021年5月8日 学園坂スタジオにて)
YNO プロフィール
富山県出身。幼少期からピアノを習い、中学校の吹奏楽部にてトランペットを始める。大学のジャズ研究会でジャズに出会い、在学中から演奏活動を始める。
2015年、金沢ジャズストリートコンペティションに自身のリーダーバンド吉田奈都実カルテットで出場し、グランプリを獲得。現在も都内を中心に演奏活動を行っている。
自身のバンドではトランペットの他にボーカルやキーボード、パーカッションにも挑戦している。また、電子音楽にも興味を持ち、トラックメイクやDJとのセッションも積極的に行っている。
※ヴォーカル=小笠原もずくさんのインタビューはこちら。
※フルーティスト/アレンジャー=伊藤寛武さんのインタビューはこちら。
※トロンボーン=松田結貴子さん、ミラー和空さん、小笠原もずくさんの鼎談はこちら。